柏崎市内の高校を卒業した職員の育成指導を担当している先輩職員(入職15年目)の声です。
新人からもらう力
私は、しおかぜ荘に勤務して15年、初めの頃の特養の仕事は「業務的」でジレンマもありましたが、個別ケアや自立支援、いろんなことを学び、今では新人を育てる歳になってしまいました。
しおかぜ荘は定員が70名で、ユニットに分かれてはいますが、廊下がつながっているため、大きな声の職員がいると端まで声が届く、明るくにぎやかな職場です。一昨年、専門学校を卒業したばかりの新人が入ってきました。八重歯の見える笑顔がすてきな、おとなしそうな女の子。まだ19歳です、とはにかみながら自己紹介していたことが印象に残っています。
この頃の私は、自分の知識と介護技術に自信をもっていて、自分の考えを一方的に伝えていたように思います。もっと努力してほしい、がんばっている姿を見せてほしい、そんなことばかりを新人職員に望んでいました。
「いま・ここ」を大切にすること
日々の現場の中で、彼女は利用者と過ごす時間をとても大切にしていました。「何かもっと楽しいことがしたいんです」。彼女は特技のフルート演奏で、利用者と楽器を使って遊んだり、時間を気にせず夢中で楽しんでいました。そのため業務が遅れてしまい、気になる職員も……(現場あるあるですね)。
そんな彼女と一緒に仕事をしていく中、私は、私と彼女の時間の使い方について考えるようになりました。1日の仕事、8時間は一緒です。限られた時間の中でのおしゃべり、家族との関わり、利用者の状態観察や個別性をどのくらい引き出せるか。彼女は業務より、目の前にいる利用者のひとこと、しぐさを上手くひろい上げ、その瞬間をとても大事にしていました。
「今日、こんなことがあったんです」と、本当にうれしそうに話している彼女から、私の知らない利用者の新しい一面や情報がどんどん入ってくるのです。彼女が利用者に誠実に向き合うことで、お互いにすてきな時間をプレゼントし合っている、そう感じました。
育てること・育てられること
私は新人職員に、長く勤めた分の情報や技術は伝えられます。しかし、彼女からはもう一度、関わり方の大切さを教えてもらいました。寝たきりの方のケアに入る前の言葉かけはあたり前です。では、日常のおしゃべりはどうだったか、とふり返ったとき、業務として関わっている自分に気づかされました。
彼女は、意思を伝えられない利用者に接する際、緊張のあまり体がこわばっていれば、それに気づいて声をかけることができる職員でした。あたり前のことだと思いますが、このような相手に対する「想い」を忘れかけていたように思います。人を育てるという立場になり、伝えている自分の言葉でハッとすることがあります。新人職員の素直な関わりに接して、自分を変えるヒントをもらい続けています。